2009/12/12 土曜日だが病院に出勤、Rajaと最後の晩餐に [土曜日]

7:10 1人オートリクシャーで病院に向かう。ちょっと今朝は体が重い。もう慣れた道のりだが小刻みな揺れが微妙に気持ち悪い。加えて今日は道が混んでいるような気がする。基本的に道路は埃と排気ガスで煙たい感じ。
7:20 セミナー室に向かうと今日は6Fの大ホールで症例検討会(ここコインバトールの形成外科の先生方が1回/月で集まり症例検討や口演をすることになっている)が開かれるとのこと。6Fのレストランで軽くチャイを頂いて休憩する。
7:40 ホールに行ってみるとまだ2-3人しかおらず、何やら準備している。徐々に人が集まってくると、隣の部屋で朝食(立食形式)をみんなで取るのだそうだ。雑談をしながら朝食を済ませる。レジデントの女医さんやターバンを巻いたfellow医師(ターバンはシーク教の人らしい)などと話しながら過ごした。UKのNikolla(Milapは帰国の準備などで来ないらしい)や同じロッジに泊まっているRajaも来ていた。
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8:00 座長の先生がいきなり、新顔が何人かいるからそれぞれ自己紹介をしてくれと言うので、3人で前に出て順番に話す(Raja、Nikola、私の順)。続いて、幾つかの口演が話される。Dr.Hariが膝周囲の軟部組織欠損に対する再建術について症例を2-3例ほど呈示して解説してくれた。基本的には遊離皮弁を用いての再建の話だった。このように症例数が多ければ、話すネタには事欠かないだろう。日本で勝負するのであれば外傷センターにして症例を集約化する他は生きていく道はないと思われる。続いて他の病院の先生(コインバトールには他にも2-3の大きな病院があるらしい)が顔面の火傷後の皮膚 瘢痕に対する腹部の皮膚 を用いて(ティッシューエキスパンダーを用いて皮膚を採取していた)のcosmetic surgery症例の呈示を行ってくれた。正直術前と大きな差がないようにも見えたのだが、皮膚の硬さが取れたので本人的には満足しているとのことだった(皮切の創がやはりどうしても目立ってしまう)。軟膏マッサージやらで経過をみて徐々に瘢痕も目立たなくはなっていたが。。。続いて、スライドなしで何やら話している先生が2人ほどいたが、良く分からなかったしあまり印象に残らなかった。最後にガンガホスピタルのレジデントの女医さんが、下腿軟部組織欠損に対するプロペラーflapの症例報告を行ってくれた。これはいわゆるperforator flapでpivot pointにあるperforator部分で回転させてdefectをカバーしようというものだった。まだ2例であったが、ここのoriginalのflapだとか言っていた。Dr. Hariがした症例のようだ。
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9:30 土曜セミナーは終了となった。病院自体は今日も普通にしており、今日は手術日でもあるので予定手術が朝から既に入っていた(このセミナーがあるためか開始は通常よりは遅くなっている)。
9:50 手術室に入ってみると、もう3-4例が準備されている。Dr.Hariがもう既に手洗いしてBPIに対する神経移植を執刀している(何とも切り替えが早い・・・)。若い男性のBPI(C5・C6・C7)でまずは、鎖骨上の腕神経叢を展開し、神経幹付近の神経刺激を行う。正直どの神経(幹か束か)何だか解らなかった。
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長胸神経 のみは聞き取れた。他も質問してみたのだが、他の見学者もいて場所が遠いし、声が小さく独特の訛りもあり発音が聞き取れないのだ。残念。それでも展開の要領や、バイポーラーを用いた組織の展開(焼き切りテクニック)などをしっかり見ておいた。途中、手持無沙汰になり、手術室の窓から外を眺めると、長い列車が延々と通過していた(日本では考えられないくらい車両がつなげられている30両以上はあったか?)。
10:40 隣の部屋では下腿の軟部組織欠損に対する局所皮弁が始まっている。脛骨・腓骨の開放骨折術後で骨折部はきれいに整復され、創外固定されていたが、骨折部を中心とした皮膚が壊死して骨が露出してしまっていた。この症例に対しては下腿後面のSural nerve・veinを中心としたaccompanies arteryを血管茎としたSural flapをするとのこと。骨折部と腱露出をカバーし、足りない部分には分層で植皮をするとのこと。MicroをしないconsultantのDrが女医さんと2人でしており、ある程度一緒にやった後、すぐに手を下してどこかに行ってしまっていた。おそらく掛け持ちなのだろう。
11:20 BPIの方は腋窩~上腕にかけての展開に移っていた。Dr.Sabapathyも見に来たりしている。腋窩~上腕の腕神経叢を解剖書の如く展開してくれた。肩甲上神経・筋皮神経・橈骨神経への刺激では反応ない一方で、正中神経・尺骨神経はほぼintactなようであった。いわゆる上位型というtypeなのだと思われる。しかし、どことどこを繋げるのかはいまだ理解出来なかった(後で絵に描いて説明してもらうことにしよう)。どうもBPIに関しては、自分ですることはないだろうと諦めてしまっているので知識がイマイチ定着してこない。
12:00 他の部屋では朝からurethro plastyという尿路系の形成手術を行っていたが、見ても良く分からなかった。他にも手根管症候群や、顔面口腔外科領域の外傷のデブリなどもしている。救急対応室のような所をふと覗いてみると、何とも凄い外傷がやって来ていた。上腕からのmajor amputationである。まだ幼さが残った顔の青年である。氷で冷やして持ってきた切断肢は明らかに損傷が酷い(焼けている上に汚染が酷い)。Dr.Sabapathyがやって来て家族や関係者に説明している。Amputationになるようだ。
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12:30 ちょっと驚きを隠せないまま手術室を後にし昼食を取ることにする。今日もCurd rice(おじや系)にしてみた。チャイも頼んで一人ゆっくりくつろぐ。
13:00 手術室に戻ると、BPIが佳境に入っている。マイクロを導入し神経縫合に取りかかろうという感じだ。先ほど急患の対応をしていたDr.Sabapathyも手洗して参加している。神経縫合は先生が行うようだ。Dr.Hariはassistに回っている。この2人は日本のDoi&Hattoriコンビの様な絶妙な呼吸があるのかも知れない。どこの神経同士を繋いでいるかは不明のまま(ちょっと恥ずかしくて聞けなくなってしまった)、神経縫合のマイクロ下の実際を見させてもらった。手の震えもなく、マイクロの倍率を変えることもなく、実に淡々と普通に縫合している。この領域に到達するにはかなりの数を踏んでいることだろう。まだ私も諦めた訳ではない。ひたすら毎日ラットで訓練して克服してやる!!と意気込みは良いのだが果たして・・・。
14:00 他では遊離皮弁術後のdefattingや、下腿の軟部組織欠損の局所皮弁+植皮、褥創に対する皮弁(と思いきや植皮だけに留めていた。理由は圧迫する部位ではないので敢えて他を回転させずにここの皮膚欠損だけを補填するのだそうな・・。納得できたような出来ないような・・)を行っている。
15:00 疲れてきて着替え室(ここには何故か2段ベッドが置いてある)で休憩する。Dr.Rajaも休んでいた。今の時間帯はあまり見所がないからとのこと。彼は良く携帯で何やら連絡をしている。私も少し時間があったので、日記でもつけようと何度かPCを立ち上げなおしたのだが、変換モードがかな入力になっていたり、Num lockというモードになっていたりで入力ができなかった(何かいじった訳でもないのだが)ので諦めた。
16:00 ふらふらとまた手術室に行くと、こんな時間だと言うのに今からGlacillis muscleを使った遊離筋肉移植(機能的移植ではない)が行われるとのこと。興味があったので、始めから見させてもらうことにした。Dr.Hariとターバンのfellow医師が入ることになっていた。準備を手伝い興味があるのだと話していると手洗いを許可された。ここは遠慮せずに入らせてもらうことにした。
16:30 踵周囲の軟部組織欠損後にどこかで植皮をされており、神経周囲の痛みと皮膚が薄いため骨が触れて痛いというような症例だった。そこに筋肉を充填し、欠損した軟部をカバーしようという計画だ。まずは、後脛骨神経・動静脈を展開する。一度手術している影響か、瘢痕が強そうだった。神経剥離も一緒に行っておく。吻合するべき動静脈をマイクロ下にしっかり展開しておく。やはり手早い。
17:20 続いて薄筋の採取に入る。Abductor magnusの恥骨付着部をマーキングし、そこから遠位に4横指にperforator vesselsがあること、そのlineより2横指下方にGlacillis muscleが位置することを解剖的に解説してくれる。皮膚切開は拘らずに近位から遠位まで一気に大きく展開していた(ここで台湾のBPIセミナーでのDr.TuとDr.Alex shinの絶妙なコンビの小皮切の展開を思い出した)。見事にGlacillis muscle筋腹が現れ、例のバイポーラー焼き切りテクニックでharvestingを行っていく。解剖を良く知っておくことが手術上達への近道であると改めて思った。
17:40 血管茎を同定し、クリップで結紮した後にharvesting完了。30分程度で採取してしまった。見ていると実に容易に思えてしまう。自分でもできそうな気になるところが上手い人の手術の特徴かも知れない。
18:00 踵付近の展開と移植筋肉のセッティングを2人でしているうちに、私は採取部位の閉創をすることになる(ドイツと同じような状況・・・)。何度か注意を受けながら、皮下の連続縫合を完成させた(始め慣れていなかったので後で修正が必要になってしまったが)。看護師の冷たい視線が結構痛かった(あまり上手でないのね~といわんばかりの感じ)。次は見返してやる!!ドレーンを留置し表皮はテープ固定をして終了。
18:20 マイクロ下の縫合は静脈2本、動脈1本している。本当に慣れている。このような境地になれば本当に手術は苦ではないかも知れない。楽しくて仕方がないだろう。マイクロの倍率を変えず(比較的低倍率でしている)に淡々と縫合していく。縫合後もpatency testは行わず(自信があるのだろう)にそのまま閉創してしまっていたのが印象的だった。
18:40 大腿部からの分層植皮を筋肉上に行い終了となる。移植皮膚の下に何やら特別なノリみたいな液体を若干注入していた。成分は教えてくれなかった(秘密なのか?)。
19:00 何とDr.Rajaが私を待っていてくれた。今日は17時頃に一緒に帰ろうなどと着替え室で言っていたのだが、まさかこんな時間まで待っていてくれるとは思わなかった。もう帰っていたものと思っていたので驚いた。休憩室にDr.Hariも手術を終え安堵した感じで入ってきた。彼は仕事が趣味というか生き甲斐のようで、休日があっても何をしていいのか解らないと言っていた。学会などで出かけるのが休日なのだそうだ。確かにインドでは休日に遊ぶという概念があまりないのかも知れない。ここら辺もドイツの医師との大きな違いかも知れない。
インド人女性は愛想があまり良くないのだが、病棟に若いNsが独りでいたので、日本からのボールペンを束で献上差し上げたら、にこりとしてくれた。。。
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19:30 Rajaと2人でロッジに戻ってきた。今日は土曜にも関わらず結構働いた気がする。ちょっと疲れてしまった。
20:30 ロッジのロビーで待ち合わせし最後の晩餐に向かう。明日彼はデリー方面に列車で帰るのだそうだ。先日行った同じレストランに向かった。街はクリスマスの雰囲気が若干溢れていた。気候的には全くそんな感じはしないのだけど。。。
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21:00 今日はマトンのカレーに挑戦してみた。他にも彼お薦めのチキンの入ったナンも食べてみた。食後にはキャラメルっぽいのが入ったアイスも食べた。かなり満足できた。
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今日は私が払うことにして、彼とまた遭う日を約束するのだった。自分は名刺を渡したけど彼は持っていなかったので、彼が連絡をくれないとこのまま関係は消滅してしまうことになるのだが。。。彼を信じて連絡を待ってみよう。同じ境遇のものがいると異国の地でも寂しさは紛れる。自分の場合、どうもインド人とこのようなことになることが多いような気がする。これも巡りあわせか?

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